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2015年07月

「インライン型フレキソ印刷機におけるダイカットおよびカス巻き上げの新機構」

1.はじめに

フレキソ印刷を構成する各要素の進化が進んでいる。これまで国内市場ではなかなか普及しないとされてきたフレキソが、少しずつ市場の認識を変化させ、徐々に目にする機会を増やしている。

各要素とは、製版技術、インキの進化、アニロックスの進化、およびサーボ駆動方式の採用から派生する自動見当調整機能に代表される機械の進化である。ワイドウェブ、ミッドウェブ、ナロウウェブ、いずれの分野でも、現在の新型機であれば、プレートロールあるいはスリーブを装着すれば印圧をかける前に見当位置を合わせてくれる機能を有する。また、印刷中もアイマーク等をセンサーで読み取ることで、少しずつ自動で見当のズレを補正してくれる機能を有する。こうした機能はサーボモーター駆動方式であるために可能な機能の一部である。印刷機メーカーは、基本的にはどこのメーカーもパスラインを短くしようと努力しており、また、チャンバー/インキパン、ドクターブレード、アニロックス、プレート、プレートロール(スリーブ)、といったインキが転移する過程で通過する各構成要素の交換作業を極限まで簡素化しようとも努めている。こうした努力のかいもあり、メーカーによって方式は異なるものの、以前と比較すると、印刷立ち上がりの際の材料/時間ロス、ジョブチェンジの際の材料/時間ロス、などが大きく削減できる仕様が実現できていると言える。

インライン型フレキソ印刷機の特長は、ワンパスで様々な加工が可能なことである。印刷の後あるいは途中に様々な加工装置を配置することで、ラミネート加工、箔押し(コールドフォイル/ホットスタンプ)加工、エンボス加工、ニスコーティング、ホログラム、裏面(ノリ面)印刷、多層ラベル形成、ロータリーシルクスクリーン印刷ステーション追加、グラビア印刷ステーション追加、デジタル印刷ヘッド追加、スリット加工、シート加工、ダイカット加工、といった加工が可能である。ただし、上で述べた「印刷セクション」が進化しても、後加工のセクションが従来と変わらず進化していないと、結局はボトルネックになってしまい、生産性が向上しない。こうした、印刷の後に続く「後加工セクション」における機械装置の最近の進化について、本稿では触れていきたい。


2.ダイカットステーション

インライン型フレキソ印刷において、大きな役割を有する後加工が、ダイカットである。シールラベル製造用途のハーフカットを行うダイカットステーションでは、フレキシブルダイを用いる方式がほとんどである。フレキシブルダイの場合、マグネットシリンダーにフレキシブルダイを貼り込み、アンビルロールとダイロールの間を原反が通過し、刃が原反の表面基材を切断することで(剥離ライナーは切断しない)ハーフカットを行う。アンビルロールは機上のダイカットステーションに搭載されており、普段のオペレーションでは交換等の作業は行わないが、ダイロール(マグネットシリンダー+フレキシブルダイ)はリピートサイズや抜く形状に合わせてジョブごとに交換が必要である。ダイロールを交換する際は、ダイカットステーション上の垂直ダイスロットから前のジョブのダイロールを引き上げて取り外し、ブロック等を外して新しいものに装着したのち、次のジョブのダイロールを上から平行になるように落とし入れる。このダイロール(マグネットシリンダー)の重量が重い。例えば、128T(リピート406.4mm=16インチ)のマグネットシリンダーで30kg程度あり、オペレータが手作業で持ち上げるにしても、ホイストで吊り上げて交換を行うにしても、非常に時間と労力がかかる。

前述の通り、「印刷セクション」での作業が簡素化され時間/材料ロスが削減されたこともあり、「後加工セクション」にも変化が求められるようになった。例えば、ジョブチェンジの際にひとつの印刷ステーションでプレートロールを外し、ドクターブレード、アニロックス、インキパン(供給ロール)を外し、新しいものをそれぞれ取り付けるのにかかる時間は、メーカーごとに差はあるかもしれないが、それぞれの新しいモデルであれば既ね30秒ほどであろう。8色分で4-5分として、振り返ってダイカットステーションを見ると、ダイカット1台のジョブチェンジのためにオペレータが機械上にまたがり、5分以上かけていては元も子もなくなる。また、材料ロスについても、最新の見当調整機能を駆使してジョブチェンジ(原反を変えない場合)を行う際の原反ロス/ヤレを10mに抑えたとしても、ダイカットステーションでの見当調整、圧調整が手間取れば10mを優に超えてしまう。

モデルによって相違はあるものの、従来式ダイカットステーションにおけるダイロールの交換作業とは、以下のような手順となる。

  1. ダイロールを両側で抑える調整ねじを外す
  2. カバーを外す
  3. 垂直スロットからブロックを外す
  4. ホイスト等を用いて垂直スロットからダイロールを持ち上げて外す
  5. ホイスト等を用いて垂直スロットに沿って新しいダイロールを下ろす
  6. ブロックを元に戻す
  7. カバーを元に戻す
  8. 両側の調整ねじを戻して固定する

前述の通り、印刷ステーションにおいては、版、アニロックス、ドクター、インキパンの交換が簡素化されている。それと比較すると、従来式ダイカットステーションではダイロールの交換に4分から5分かかるため作業時間が比較的長く、あわせて手作業で行う場合も含めて労力がかかる印象が非常に強い。


3.クイックチェンジ式ダイカットステーション

このようにボトルネック化したダイカットステーションの機構を見直すべく、開発が進められ、現在では複数の印刷機メーカーからクイックチェンジモデルのダイカットステーションが入手可能である。いずれも、重視しているのはジョブチェンジ時に課題であったダイロールの搭載方式である。いくつかの機構があるが、一例を紹介すると、ダイロールをカセット方式に変更し、カートを用いてスライドすることでダイロールの搭載/取り外しが可能なものがある。ここでは、従来は垂直であったアンビルロールとダイロールの位置関係(アンビルが下、刃型が上)を水平にして油圧で圧をかける機構を用いている。この方式による最大の利点は、ダイロール交換の作業が極めて単純化されたことである。従来は5分かかっていたのが、30秒で済むのである。一例ではあるものの、作業手順を以下に記す。

  1. ダイカットステーション前面のカバーを開く
  2. 専用カートをダイカットステーション前部に固定する
  3. 機内から前のジョブのダイロールをスライドしながら取り出す
  4. 新しいジョブのダイロールを搭載した専用カートをダイカットステーション前部に固定する
  5. 機内に新しいジョブのダイロールをスライドして搭載する

細かい作業としては、新しいジョブのダイロールをスライドして機内に搭載してから固定する作業等もあるが、ものの4~5秒であり、交換作業自体は30秒もあれば完了する。

こうしたクイックチェンジ式ダイカットステーションには、サーボモーター駆動による自動見当調整機能も備わっていることが多く、見当調整作業にも多くの時間はかからない。

このように、「印刷セクション」だけでなく、「後加工セクション」においても、生産効率を大きく改善するような技術革新が出てきている。


4.抜きカス巻取装置

ダイカットステーションでハーフカットした原反をシールラベルの形状に加工するには、ダイカットで生じた抜きカスを巻き取る装置が必要であるが、いわゆるこのカス上げ装置にも機構の変化が生じてきている。

カス上げ装置では、ダイカットステーションで抜いた表面基材のカスをストリッピングロールで剥離ライナーから剥がし上げ(写真1)、アイドラロールを通って駆動式巻き取りロールまで持ち上げて巻き取る(写真2)方式が一般的である。

写真1:
従来のカス上げ装置(抜きカスを剥がし上げる工程)

写真2:
剥がし上げた抜きカスを巻き取る工程

この従来方式において課題となるのが、カス巻き取りロールに到達するまでの距離が長い(カスを巻き取り直径が大きくなるため、ある程度の空間が必要)ために、抜きの形状、かかるテンション、スピード、といった要因により抜きカスが切れることがある、という点である。例えば、以下の写真3のような抜きカスの一部分が極めて細くなるような刃型のパターンだと、生産スピードが極端に落ちてしまう。印刷機能、ダイカット機能自体は150m/毎分で稼働できる能力を有していても、カス上げの不安定要因により生産スピードが30~40m/毎分まで低下してしまうのである。

写真3:
抜きカスの一部が極細になる刃型パターン;の例

こうした課題を改善すべく、抜きカスが巻き取りロールまで到達するパスラインを極力短くしてカス上げの不安定要因を排除できるような機構が最近の半年ほどで市場に紹介されている。

「ゼロギャップ方式」と呼ばれる、この抜きカス巻き取り装置では、ダイカットステーションでハーフカットした原反を剥離ライナーごと(数本のアイドラロールを通った後に)一旦カス巻き取りロールの横まで持ち上げ(写真4)、180度方向転換して下に向かう際にロールの曲面上でストリッピングロールにより剥離ライナーから抜きカスを剥がしている。特筆すべきは抜きカスを持ち上げた直後にストリッピングロールの反対側でそのままカス巻き取りロールに到達してしまう距離の短さである(写真5)。カス巻き取りロールを駆動する装置自体が水平方向に可動式であり、変化するロール直径に対応している。この方式による利点としては、抜きカス切れリスクが大幅に低減できること、テンションが大幅に安定できること、カス巻き取りロールの位置が低いため取り扱い性が向上すること、等である。また、形状(写真3)によって本来ならば150m/毎分出せる能力を持っているのに30m/毎分に制限されてしまう、といった状況でも生産スピードを落とさなくて済むようになる点が非常に大きい。

写真4:
ゼロギャップ方式の抜きカス巻取装置

写真5:
抜きカスが巻き取られるまでの距離が短い

5.おわりに

インライン型フレキソ機の後加工機能のうち2つに絞って紹介したが、その他にも、近年ではUVがLED化したり、ターンバーを用いずに裏面印刷ができたり、ホットスタンプ/コールドフォイルでフォイルの前後左右の無駄を削減する機構が紹介されたり、と様々な機能が出てきている。ナロウウェブ-ミッドウェブを主舞台とするコンバーターにとってグローバル/ナショナル展開していく中で差別化をするための様々な要求が出ており、それに対してメーカー各社が色々と知恵を絞って研究開発を行う、好循環のサイクルが生まれていると考える。こうしたサイクルから、インライン型フレキソ機に、より幅の広い柔軟性が備わり、かつ極めて高い生産性を実現することができれば、極めて有効な選択肢として市場から認識されるものと期待したい。