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2011年07月

「フレキソ刷版の貼り込みと校正の現在」

1.はじめに

LAMS、CTPと呼ばれる、デジタルフレキソ製版方式が普及し、その後、デジタル方式のシームレスフレキソ製版技術が発表されてから、10年以上を数える。イン・ザ・ラウンド(ITR)、エンドレス、シームレス、など様々な呼び名で紹介されたこの方式(本稿ではシームレスで統一する)は、スリーブの利用を特徴とする。シームレス画像の印刷は、古くは壁紙等の用途でのレーザー彫刻ゴム版方式が使用されてきた歴史があるが、その中で、シームレスフレキソスリーブ製版技術が登場したのは、レーザー技術の進化、版材の素材の進化、製版技術の進化、片持ち式エアーマンドレルタイプ印刷機の普及、といった要素が背景にあったと言える。

シームレスフレキソ製版技術として、当初紹介されたのは、ブラックマスク上でアブレーション描画したのち、露光、そして溶剤により洗い出して版レリーフを形成する方式だった。次いで、ブラックマスクを用いない、レーザーで直接ポリマー素材のシームレススリーブ版に描画するダイレクトレーザー彫刻が本格的に紹介されていった。その次に、露光したのち溶剤で洗い出す代わりに熱で未露光樹脂を除去する熱現像方式が紹介された。

シームレスフレキソ版の利点は、シームレス画像が印刷可能、高い見当精度、版浮きや気泡のトラブルがない、高速での印刷が可能、等である。対して、課題となるのは、製版設備に対する投資、およびシームレススリーブ版材の調達、等である。ブラックマスクタイプの版材にせよ、ダイレクトレーザー彫刻用の版材にせよ、コストと納期が課題となる。自社内でスリーブ版材をコーティングするという手段も選択可能であるが、その場合、当然、コーティング、研磨、ブラックマスク塗布、といった工程に対する設備投資、ベーススリーブのストック等が必要となる。

ここ10年、かようにシームレスフレキソにおける製版方式が盛り上がりを見せたのと同時に、従来式の板状フレキソ版材の製版方式においても様々な試みがなされ、かつその中からいくつかの革新技術が登場している。4000dpiが一般化するなど、CTPプレートセッターの解像度向上、ラミネートにより感光の酸素阻害を防止したフラットトップドット形成製版方式、ドットとして再現されない微小な「つぶれ役」ドットの描画と間引きドットによるハイライトスクリーニング、露光におけるLED照明の利用、UVインクジェットを利用した版裏面へのメークレディ加工処理、といったように板状製版における技術分野でも多くの革新が見られた。

ただ、シームレススリーブ版では刷版貼り込み工程は不要となるが、板状フレキソ刷版にはシリンダーまたはスリーブへの刷版貼り込み工程が必要となる。単純に新しい技術という見方をすれば、シームレス製版が将来の先取り、ということになるのであろうが、それほど単純な問題ではない。というのは、板状製版では、露光や洗い出しの工程において様々な工夫を加えることにより、あるいは、上記の多種多様な製版技術を採用することにより、きめ細かい刷版の仕上がり品質が得られるのである。(図1) これは、2008年時点での北米市場のシームレス版の規模が50,000平米前後(欧州市場はその3-4倍)*1、とそこまでの普及は進んでいない点からも伺える。こうした、板状フレキソ製版技術の利点を最大限活用するには、印刷工程の前段階における貼り込み工程の精度が極めて重要だと言える。というのも、優れた刷版品質が得られても、印刷見当が合っていないと刷版の持つ品質は水泡に帰すからである。

図1:露光工程や洗い出し工程において様々な技術を採用することで、板状製版の品質を上げることが可能。
図は板状フレキソ版のハイライトエリア。

2.板状フレキソ刷版の貼り込み方式

ここで、板状フレキソ刷版の貼り込みについて述べていきたい。そもそも、手彫りのゴム版にアニリン染料を用いていた時代、1mm以上も厚みのばらつきがあったフレキソ刷版は、木製のシリンダーに釘で打ち付ける方法や、スチール製のシリンダーに接着剤で貼り付ける方法が用いられていた。そうした単純な作業から、色数の増加、被印刷体の多様化、技術の向上、といった環境の推移をうけて印刷機がより高価なものに変化していき、非稼働時間がより重要性を増すにつれて貼り込みと校正がより重要な役割を占めるようになったのである。

こうした中で貼り込みのための専用機が開発され、その方式も様々なものが市場に登場した。現時点で、従来方式と呼ばれる貼り込み方式には、以下のものが挙げられる。

  • オプチカル方式
  • ピン方式
  • ビデオ方式

上記のうち、オプチカル方式は実際にオペレータが目で見て精度を判断する方式である。この方式では、ハーフミラーで前の色の校正刷りを参照しながら、次の色の刷版の位置決めを行うものが一般的である。当然、ハーフミラーのアラインメントがきわめて重用であり、なおかつ、各シリンダーが平行に揃っていなければならない。

次に、ピン方式は、製版時にピン穴を開けておく方式である。各色等しい位置にピン穴をパンチングで開け、版シリンダー上の特定位置に配置したピンによって各色の位置を決める方式である。機械精度もさることながら、刷版の材質、ベースフィルムの強度などが重要となる。

最後に、ビデオ方式とは、上記3つの貼り込み方式の中では最も新しい貼り込み方式である。貼り込み機のレール上に拡大カメラを配置したこの方式では、モニタ上に拡大されたトンボ/マイクロドットを参照しながら作業を行う。

ビデオ方式における具体的な作業順序としては、

  1. カメラをシリンダー/スリーブ上に配置する
  2. シリンダー/スリーブにクッションテープを貼って剥離ライナーを剥がす
  3. 剥離ライナーを切り、カメラ下のクッションテープ粘着層が3cm幅程度あらわれるよう、
    再度剥離ライナーをクッションテープ表面に貼る
  4. 一方のカメラで刷版片側のトンボ/マイクロドットの位置を基準線に合わせて揃える
  5. 残りのカメラで刷版反対側のトンボ/マイクロドットの位置を基準線に合わせて調節する
  6. カメラを固定し、刷版をクッションテープの粘着層にしっかり固定する
  7. 剥離ライナーを剥がし、刷版を丁寧に固定して貼り込んでいく
  8. 1色目の刷版を貼ったら、カメラは動かさずそのままの位置に固定して、
    次の刷版のトンボ/マイクロドットの位置を同じ参照位置に合わせながら貼り込んでいく

以上である。

ビデオ方式の貼り込みは高い見当精度を有するが、印刷工程に移る前に校正刷りを行っておくとよりコミュニケーションが円滑になる。ここでの校正刷りには2種類があり、一方は見当精度を示す位置の校正、もう一方はある程度の色再現を示す校正である。ハンドローラーでインキングを行う校正刷りは見当校正である。ハンドローラーによるインキングの代わりに、実機と同じセッティングのアニロックスロールを用いて校正刷りを行う機種もある。スピード、アニロックス直径、印圧、等の変動要因の存在は否めないものの、この方式の校正刷りであれば、ある程度の色校正とはなりえる。

また、拡大カメラを利用しつつ、ハーフミラーも採用している機種もある。ビデオミラー方式とも言えるこの方式では、校正用紙上の画像を参照しながら次の色の刷版の位置を決めて固定していく。つまり、トンボ/マイクロドットだけでなく、前の色の画像を参照しながら次の色の刷版位置を決めていくことが可能である。(図2、図3) いずれの方式でも言えることだが、機械各部位の精度がきわめて重要となる。具体的には、校正ドラムのTIR(回転真円精度)、シリンダー/スリーブのTIR、両回転軸の繰り返し位置精度、印圧の繰り返し精度、などである。

上記の方式に加え、ギア/ギアレスの別、シリンダー専用/シリンダー・スリーブ両対応の別、といった要素も貼り込み機において重要な要素であることも述べておく。

図2:ビデオミラー方式。校正ドラム上の図柄を参照しながら刷版の位置決めが可能。

図3:カメラを通してモニタ上に表示される校正ドラム上の画像(図では黒で表示)と刷版のレリーフ部分(図では白で表示)を合わせて位置決めを行う。トンボだけでなく、印刷画像の様々な部分での参照が可能。

3.新しい貼り込み方式

前述のような、従来式の貼り込み/校正方式を土台として、現在では、バーチャル方式とも呼ばれる貼り込み/校正方式が出てきている。この方式では、カメラ、またはハーフミラーを通して校正用紙上の絵柄を参照するのではなく、貼り込み機搭載の記憶媒体上に印刷画像のファイルをアップロードし、モニタ上に表示させた画像を参照して各色の刷版の正確な位置を決めて固定していく方式である。(図4、図5、図6)

具体的には、PDFやJPEG形式の画像ファイルを取り込んでモニタ上に表示させる。バーチャル方式と呼ぶだけあって、この方式では校正刷りは行わず、代わりに、日時や色数、テープの種類、アニロックスのセッティングといった条件などを記憶させて貼り込み作業レポートとして保存することが可能である。当然ながら、校正刷りがコミュニケーション手段として必須条件である環境においては、このバーチャル校正方式は適さないと考えられる。

また、特色として挙げられる機能の一つに、刷版を貼り込む前のテープ表面の厚み計測がある。(図7) 赤外線センサーによる表面の高さを計測することで、どの部分が高く、どの部分が低いかを把握することができる機能もある。

また、スリーブを装着すれば全自動で刷版を貼る機能を有する機種も登場している。こうした機種には、シリンダー非対応、様式、サイズといった制限はあるものの、ジョブに大きな変動がない限り、非常に効率的で有効な投資となりえるであろうことをここに記しておく。

図4:バーチャル方式。基本的な作業はビデオ方式と同様。

図5:バーチャル方式。プレッシャーロールで均一に刷版を固定していく。

図6:モニタ上に表示された画像ファイル(図では黒で表示)と実際の刷版のレリーフ画像を合わせて位置決めを行う。

図7:赤外線センサーを用いた高さ計測により刷版のどのエリアが高く、どのエリアが低いかを把握することができる。

4.さいごに

本稿では、板状製版によるフレキソ刷版の貼り込み方式を紹介したが、当然ながら、固定に用いるクッションテープの厚み、硬さ(密度)、弾性、粘着強度、といった要素も重要である。フレキソにはフレキソ用に開発されたテープが用いられており、それぞれ、寸法安定性、取り扱い性(貼りやすさ、剥がしやすさ)、といった特性を強みにしている。近年では、スリーブとテープ間、あるいはテープと刷版間に溜まりやすい気泡を除去しやすくしたエアー抜き機能を表面構造に有するテープ(エアーチャネル、マイクロエンボス構造、など)も開発されており、フレキソ印刷の品質向上に役立っている。貼り込み機にもクッションテープを平行に貼るための設備(図8)が開発されており、変動要因を極力減らすための努力がなされている。

図8:クッションテープホルダー(右)およびプレッシャーローラー(左)。
均一に圧をかけることでテープの貼付精度を上げることができる。

<参考文献>
*1 FLEXO Magazine, Flexographic Technical Association, p33