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2013年08月

「印刷検査照合システムについて」

1.はじめに

パッケージ、ラベル印刷において、出荷前の品質検査は必要不可欠である。ブランドオーナーの立場からは、パッケージの印刷品質や色濃度が変わることによって、消費者に与える印象が変わってしまう可能性がある。また、数字や文字の印刷に不具合があった場合、大規模な回収やブランドの信用問題に発展しかねない。

印刷会社の立場としても、印刷トラブルが生じた製品を誤って出荷した場合の顧客からのクレーム・保証問題が発生する危険は常に存在する。また、製版データや刷り出しの検査を本生産前に行うことで、ヤレの発生を事前に防ぎコスト削減に寄与することもできる。

印刷検査システムは印刷会社の営業面でも利点となる。上述のようにブランドオーナーはパッケージ品質安定を目指しており、印刷会社は彼ら顧客に対して、導入した検査システムを自社印刷品質の安定化の裏づけとすることができる。さらに国際規格ISO9001を取得している検査機を導入すれば、世界で標準化された品質検査水準を、海外展開するブランドオーナーに対して保証することも可能である。

本稿では印刷物検査システムの概要をオフライン検査とインライン検査別に記述し、最後に今後の検査工程(図1)に求められる機能の動向について述べたい。

図1:検査工程例

2.オフライン検査

これまで印刷業界では、本生産前の製版データ比較や刷り出し検査工程において、オペレーター任せの目視検査が一般的だった。これは、顧客の承認を得た校了紙と製版データ出力紙や刷り出しサンプルを目視で比較し、不一致箇所がないか確認する方法である。

この工程に検査システムを導入することで、作業工程を以下のように改善できる。

  1. 検査工程・検査基準の標準化
  2. 検査時間、労力の低減
  3. 技能、経験が不要

検査システムでは、事前に設定された検査基準を採用するため、異なるオペレーターが検査をしても一定基準の検査を行うことが可能である。検査基準では数値設定が一般的であり、ブランドオーナーなど顧客との検査基準の取り決めも明瞭に行うことができる。また、欠陥箇所は自動検出されるため、目視検査のように検査対象を隅から隅まで慎重に目を通す必要がなく、検査時間やオペレーターの労力を削減することができる。その他、目視では欠陥検出が難しいデザインや馴染みのない言語(図2)の検査に対しても、特別な技能や負担は必要ない。

図2:馴染みのない言語例

以下、オフライン検査システムを使用した際の検査所要時間の一例である。

・検査システムによる所要時間   …計 約1分30秒

<詳細>

  1. 印刷サンプルを設置する  …約10秒
  2. 印刷サンプルのスキャン  …約20秒
  3. 自動比較検査  …約20秒
  4. 不一致箇所のOK、NG評価  …約30秒
  5. レポートの作成   …約10秒
  • * 検査対象印刷サンプルサイズ:約600mm×420mm
  • * 検出欠陥数:約20個

上記と比較すると、目視検査ではサイズ・デザインによって1点当り10分~30分程度の時間を要する場合もあるため、検査システム導入により検査工程の短縮化が期待できる。


(1)検査システム概要

検査方式は比較検査である。まずは欠陥がない見本となる画像(以下「マスター」と表記する)を設定する。その後、検査対象となる画像(以下「サンプル」)を設定し、マスターとサンプルを比較する。その際、両者の不一致箇所(スポット状の汚れ、線の太り、色の濃度差など)を欠陥箇所として自動検出する。検査用途はシール、ラベルのような多面付け・小サイズの印刷物から、菊全サイズのような大きい印刷物まで様々であり、スキャナーのサイズを変更することにより対応可能である。
(図3)

図3:スキャナーに印刷サンプルを配置する

(2)設定

最初に検査に必要なマスターとサンプルの設定を行う。それらの画像設定には2つの方法がある。

  1. PDF、tiffなどの電子データを読み込み設定する
  2. 印刷物をスキャンして設定する

例えば印刷現場で使用する場合は、校了となる電子データをマスターとして設定、スキャンした刷り出しをサンプルとして設定し、比較検査を行う。製版現場では電子データ同士を比較して、誤って削除してしまった文字などの欠陥検出ができる。

次に検査基準の設定を行う。一般的に検査基準の設定値には、以下のような項目が挙げられる。

  • ・ サイズ
  • ・ 色の濃度
  • ・ 位置ズレ
  • ・ 線の太り
  • ・ カラー/白黒などの色認識

“サイズ”では検出する欠陥の大きさを調整する。例えば200ミクロンに設定した場合、300ミクロンの欠陥は検出するが、100ミクロンの欠陥は検出しない。また、欠陥サイズの最小設定値は各検査機によって異なる。例えば600dpiのスキャナーを使用した場合は1ピクセルサイズが約42ミクロンであるため、最小で約50ミクロンの欠陥を検出できる。

“色濃度”では、マスターとサンプルの色差の許容範囲を設定する。数値を厳しく設定した場合、例え同じ“赤”がマスターとサンプルに使用されていても濃度の違いを欠陥として検出することが出来る。一方でこの数値を甘く設定すれば、同一色の濃度差は欠陥とせずに、“赤”で印刷すべき箇所を“黄色”で印刷するなどの色違いの箇所のみを検出することが出来る。

“位置ズレ”では許容する見当ズレ範囲の設定、“線の太り”では許容する線・ドット太り範囲を設定する。その他にも色を“カラー/白黒”のどちらで認識するか、または“RGB/DeltaE”のどちらの基準を採用するかなどの設定を行う場合もある。

検査設定の際に留意すべき点は、欠陥検出数が過剰にならず、かつ顧客の要求水準を満たす検査基準を用意することである。なぜなら闇雲に検査設定を厳しく設定すると、欠陥の見逃しがなくなる一方で検出される欠陥数が増え、結果的に現場での検査工程に要する時間が膨大になってしまうからである(図4)。
検査システム導入時の設定作成の際は、メーカーと十分に相談した上で適切な設定を準備する必要がある。

図4:検査設定値例

(3)検査

検査を開始するとマスターとサンプルの不一致箇所が自動検出され、画面上で拡大表示される(図5)。オペレーターは拡大された不一致箇所を確認し、製品として出荷可能か否かをチェックする。全ての不一致箇所をチェックして問題がなければ検査工程が終了となり、次の生産工程あるいは本生産に進む。問題があった場合はデータの再作成、再版や印刷機の再調整などを行う。

図5:検査結果表示(左:リピート全体 右:欠陥検出箇所)

(4)レポート作成

検査工程の中でレポートの作成が必要な場合は、必要な情報を含んだレポート作成を行う。例えば、検査製品名、商品コード、日付、検査者などの情報を表示することが可能である。顧客への検査証明として、あるいは社内でのデータ管理の1つとして使用する。

(5)バーコード検査オプション

ここで検査オプションとしてバーコード検査について述べたい。バーコード検査には、「バーコードリーダー検査」と「グレード検査」の2種類がある。バーコードリーダー検査では、実際に印刷したバーコードをリーダーでスキャンして情報を読み取れるか確認する方法である。この方法では、使用機種により読み取り性能が異なる上に、バーコードの印刷品質(反射率、エレメントの太り細りなど)を検査することが出来ない。

一方のグレード検査では、バーコードの品質を検査することが可能である。印刷されたバーコードをスキャンし解析することで、印刷されたエレメントの反射率などに基づいたA~Fまでのグレードで品質評価を行う(図6)。その際の採用基準として、CEN/ANSI検証やトラディショナル検証などの国際基準を使用することが可能である。また、検査対象となるバーコードもCode128、EAN-13/ISBN-13、GS1(RSS)、Data MatrixやQR-Codeなど現在普及するほとんどの形式に幅広く対応している。欧州HIBCC(Health Industry Bar Code Council、医療産業バーコード管理団体)をはじめ、日本企業でも医薬品バーコードに高水準のグレードを要求する傾向が続いており、国際基準に基づいたグレード検査の重要性は今後も高まっていくと言える*1

図6:バーコードグレード検査例

3.インライン検査

従来の目視によるインライン検査では、オペレーターが印刷中のジョブを目視で確認し、重大な欠陥を発見した際に印刷機の停止、再調整を行っていた。その目視検査に代わってインライン検査システムを導入する利点として、既述の「検査基準の標準化」の他に以下が挙げられる。

  1. 印刷不良に伴う再生産コストの低減
  2. オペレーターの負担軽減
  3. 高速印刷への対応
  4. 後工程での簡略化

1つ目の利点は、重大な欠陥の発生をサイレンでオペレーターに知らせる、または印刷機を自動停止できるため、不良印刷を継続する危険を回避しヤレの発生を防げることである。もしインライン検査を印刷機上で行わない場合、1種類のジョブが終了した後の検査工程ではじめて出荷不可能な印刷不良を発見することになる。結果、大量のヤレと印刷やり直しのためのインキ、原反、人的コストが必要になってしまう。また、目視検査のようにオペレーターが常に印刷機についている必要がない上、目視では確認できない高速でも検査できる。さらに、印刷後の後工程が簡略化できる。例えば、印刷機上での検査情報を後工程であるスリッターやリワインダーと共有することで、ロールのどの位置に欠陥が発生しているのかを予め把握する、またはスリッター上での検査工程を省略することなどが可能になる(図7)。

図7:印刷機に設置したインライン検査システム例

(1)検査システム概要

オフライン検査同様、マスターとサンプルの不一致箇所を自動検出する比較検査である。インライン検査では以下の2通りの使用方法がある。

  1. 印刷機上での全数検査
  2. リワインダー、スリッターでの全数検査

(2)設定

オフライン検査同様、最初に検査基準となるマスターの設定を行う。インライン検査の場合は、刷り出しをマスターとして設定する。この際に重要なのは、設定したマスターが本当に基準となる品質を保持しているか確認することである。もし刷り出し自体に欠陥がある場合、低品質なマスターを基準にして検査を行うことになる。最悪の場合、欠陥が発生し続けているにも関わらずジョブ終了まで気づかない事態が発生しうる。

このような危険を避けるために、マスターとして設定する刷り出しの品質検査を行うことができる検査システムも存在する。オフライン検査と同様の方法で、PDFやTiffの“校了データ”と“刷り出し”の比較検査を行い、刷り出しに欠陥がないことを保証する。もし、刷り出しに欠陥を検出した場合、刷り出しから欠陥がなくなるまで印刷機の再調整を行う。

検査設定についてもオフライン検査機同様、欠陥サイズやコントラスト、線の太り、位置ズレなどの基準を設けることが可能である。

その他の設定として、「検査マスク」を設定するインライン検査機もある。この機能では印刷物の一部のみを非検査箇所として設定する、あるいは検査基準を厳しく/緩くするといったことが可能である(図8)。これにより、デザイナーの色濃度に対する要求が厳しい箇所のみを厳しく検査する、あるいはダイカットの半抜きによって廃棄される部分を非検査箇所として設定するなど、検査の効率化を図ることが可能である。

図8:マスク設定例

(3)検査

検査機がマスターとサンプルの全数比較検査を行い、マスターとの不一致箇所を自動検出、画面上で拡大表示する。検出された欠陥が出荷可能な品質か否かをオペレーターがチェックする。

(4)レポート

オフライン検査同様、必要な情報を含んだレポートを作成する。作成されたデータは後工程で活用される。また、検査途中で行った設定変更や検査の一時停止等の履歴が全て記載されるシステムであれば、後日検査工程の検証などを行うことも可能である。


4.将来の動向

最後に検査システムの将来的な動向について、以下3点を挙げたい。

  1. 一層の自動化と高速化
  2. デジタル印刷への対応
  3. 点字検査への対応

1つ目は、より一層の“自動化”そして“高速化”である。検査システムを使用する現場では、全ての業務の効率化が求められており、より少ない人数で、より早く、より多くの仕事をこなすことを求められており、その傾向は今後も継続すると考えられる。検査工程も同様である。たとえ安定した検査を行うことができるシステムでも、設定の所要時間が長い、あるいはオペレーターの使用が難しいといった問題点は致命的である。

自動化に関しては、例えばPDFをマスターに使用することで、社内サーバー上で一括してデータを管理し、検査システムが自動的にサーバーから必要な検査データを呼び出してくるといった社内システム構築が必要となる。また、マスターとしたPDFの各レイヤーに、特色・抜き・ニス等の情報を分割させることも可能であるため、1つのマスターを活用して製版現場でのデジタル比較と印刷現場でのサンプルとの比較が可能となる。その他にも、簡易な検査設定や、オペレーターが使用しやすいインターフェイスの採用など、検査工程が全体業務の効率化にいかに寄与するかを考える必要がある。

インライン検査における検査の高速化も必要である。昨今の最新型ワイドウェブ印刷機は、現在400m/分のような高速で高品質のプロセス印刷を行うことが可能である。これまでのインライン検査では、例えば400m/分の速度で検査する場合、カメラの画素数を4096画素から2048画素まで下げる、色をカラーからモノクロにするなどの品質面における制限があった。今後高速・高品質の印刷がさらに普及することを考慮すると、400m/分の高速印刷時においても、カラー・最小分解能0.1mmといった高性能のインライン検査を行うシステムが必要である。

次に、デジタル印刷への対応も大きな課題である。デジタル印刷では、医薬品印刷などのラベル全てに異なる番号を振る“可変情報”の印刷が可能である。可変情報では2種類の検査が求められる。1つ目は出力予定の情報全てが間違いなく出力されているかの検査である。例えば、01,02,03…といった連番で出力される予定数値の中で、02のみが出力されていない場合はその欠陥を検出する。2つ目が出力された数値の印刷品質に問題がないかの検査である。例えば出力された“3”上に汚れあり“8”に見えてしまうなど、印刷品質の問題を検出する。これら2種類の検査を行うインライン全数検査機を導入することで、医薬品包装など厳しい品質保証が求められる仕事にも対応可能になる。

3点目は、点字検査についてである。今後点字検査の必要性が日本でも増大していくことは十分考えられる。2013年現在、日本では点字表記についての規制は存在していないが、EUでは2010年に市販医薬品容器への点字表記が義務化される(BS規格 EN規格 15823)など、点字検査の需要が高まっている。点字の高さ、位置などの「点字検査」を行うシステムも既に市場に参入しており、今後より一層必要性が増していくであろう。

<参考文献>
*1  HIBC BARCODE for Industry and Health Care Application Guidelines, p19
http://www.stethos.com/barcode/data/HIBC-Industry Guidelines 2000.pdf